奥津晶彦(昆虫観察ナビゲーター、神戸市西区)
明石公園は駅の目の前という賑やかな場所にありながら、レッドデータ記載種を含む植物や昆虫が多くいる、まさに、奇跡の場所であり、自然観察会などを開催するのに最適な場所であった。しかし、毎年、自然観察会に来ている子どもに「なんで、カブトムシがいつもいる樹、伐られちゃったん?」と聞かれて、私はどう答えたら良いかわからなかった。
つなぐ会のスタートは約1700本にのぼる明石公園の過剰な樹木伐採について、「このままでは私が子どもの時に虫を追いかけ、植物を観察した貴重な自然がなくなってしまう。どうにか、しなければならない。どうすれば良いだろう。」と、当時は市議会議員だった丸谷聡子氏(昨年5月明石市長に就任)に相談したことから始まった。
そこから、多くのメンバーに入っていただき、明石市長や兵庫県知事に要望書を出し、マスコミにも取り上げられるようになった。また、シンポジウムなども開催することにより、つなぐ会の認知度が上がり、兵庫県知事は樹木の伐採を一旦ストップすると表明した。県が方針を変えてくれたのは大きな前進となった。
その後、県はあり方検討会を設置し、有識者を中心とした組織をつくった。そこには一般県民の傍聴だけでなく、意見を述べることができる場も設けられた。また、明石公園の樹の伐採についても、丁寧な説明を行い、私たちに意見を聞いた上で行うようになった。本当に伐る必要のある樹なのか。また、伐ってしまって良い木なのか。樹木だけでなく、草や池、湿地に関しても、慎重な対応が今後も必要だと感じている。
今、日本全国の公園の樹や街路樹がどんどん伐られている。しかし、今回、私たちが県に意見を述べることによって、私たちの主張がある程度取り入れられたように、他の地域でも、県民の意見を聞いてもらえるようにしていきたい。公園はパークであってランドではない。お金のある人もない人も平等に遊べる場であることを、私自身も今回、再認識した。
一度、なくなった自然は、復活するのに100年かかっても200年かかっても取り戻せない。自然界は10-1=9ではない。
私たち日本人が持っている魂。岩も木も動物も。それを崇拝する心を次世代に繋ぎたいと思っています。伝えたいのは、決して、目に見えるものだけじゃない。自然を尊び、自然と共に生きる日本人の魂を次世代に繋ぎたいと思っています。
今回、つなぐ会のメンバーとして、さまざまな分野の多くの人と出会い、いろいろな考え方を勉強できました。私にとって、本当に素晴らしい経験となりました。ありがとうございます。
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