明石公園の自然の保全に向けて

柴田 剛(自然観察指導員、明石市在住)

 明石公園の樹木の過剰伐採について、やりすぎだと思うようになったのは、東ノ丸の南東の角にあったアベマキの大木が伐採されたときからであった。このアベマキの木が出していた樹液にはいろんな昆虫が集まり、自然観察会などで絶好のポイントとして利用してきた場所であった。ゴマダラチョウ、ヒオドシチョウ、コムラサキ、ルリタテハなどの都会では普通に見られないチョウ類や、チャイロスズメバチ、モンスズメバチ、ハチモドキハナアブといった珍しいハチやアブも見られるすごい場所なのであった。

 公園を管理している人たちは明石公園の自然のことを全く知っていないのかと、無性に腹が立ったことがこの会に参加するきっかけであった。

 明石公園は明石城の城跡を中心に都市公園として管理されているが、城として機能していた時代から城の敷地内やその周辺に生育・生息した植物や昆虫が、周辺の自然が失われていくなかで、今も公園内に多く残されている。

 石垣やその周辺については、本来は岩場などの樹木や草の密生しない乾燥した場所に生える多くの希少な植物が生育する場所となっている。周辺にこのような環境が失われていくなか、いろんな絶滅危惧の植物の生存場所として重要な役割を果たしていることがあまり理解されていないように感じられる。兵庫県版レッドデータブックのAランクのイワレンゲ、フジバカマ、Bランクのマキエハギ、Cランクのメノマンネングサ、イヌノフグリ、ウマノスズクサ、ニシキソウ、絶滅危惧種ではないがこの付近では見られないカラスノゴマなどが生育する場所である。

 多くの昆虫にとっても石垣のすき間や石垣周辺の草地は生育場所としてだけでなく、越冬場所としても重要な役割を果たしており、絶滅危惧の昆虫ツマグロキチョウ(兵庫県の要注目種)の越冬が確認されている。

 これらのことから、景観面だけで石垣周りをきれいにしすぎるのは問題があると考えている。

 公園を取り囲む土塁はカゴノキを含む照葉樹林の構成種が残されている樹林として重要であり、ここには兵庫県内で2番目に大きなウバメガシの大木も生育している。また、公園内のササの茂ったところでは、絶滅危惧の昆虫のゴイシシミミ(兵庫県Bランク)が都会では珍しく毎年発生している場所もある。

 さらに、子どもの小川から桜堀にかけての水路や湿地には、上流から流れ込む農業用水を経由して、水田にしか見られない植物もいくつか見られ、絶滅危惧のカワヂシャ(兵庫県Cランク)も生育している。

 明石公園について、ようやく自然の保全や自然とのふれあいの場としての機能が位置づけられようとしている今、ていねいな実態把握と自然環境を考慮した管理や利用が必要である。知識や情報をあまり有しない行政機関だけで管理していくのではなく、利用者としての市民参画のもとでのよりよい管理・運営方法を模索し続けることが重要であり、ちょうど今、その時期にきていると思われる。

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