明石公園を次世代につなぐ会(声明)

県立都市公園のあり方検討会「最終提言」および県の公園整備・管理方針(案)への見解

 いま全国各地で、公園の樹木を伐採したり、街路樹を丸坊主にする“過激な剪定”や伐採、植樹帯の削減・減少が常態化するなど、生態系や自然環境の保全とは真逆の植栽管理が横行しています。そんな中で明治以降、城跡をそっくり公園として親しまれてきた明石公園でも公園を管理する兵庫県によって樹木の過剰な伐採が行われ、市民が「明石公園の自然を次世代につなぐ会」をつくり過剰伐採の中止を求め、自然豊かな公園を次世代へ受け継ぐ運動が行われました。

 私たちが声を挙げ始めたのはわずか2年半前のことでしたが、兵庫県は伐採を中断、中止して「県立公園のあり方検討会」を設置し、明石公園部会は市民との対話も含めて2年間で14回に及ぶ会議等を重ね、その提案をもとに検討会は3月末に最終「提言書」を知事に提出しました。

 過剰な伐採はお城の石垣保全や石垣の見栄えを良くすることから始まったもので、当初は樹木と石垣の保全をめぐる論争から始まりましたが、議論は樹木の剪定や伐採にとどまらず、公園の管理運営に多様な関心を持つ市民や利用者がどのように関わり、その声を反映していくかという「公園管理運営への市民参加」の仕組みづくりに発展し、兵庫県の公園行政にとっても画期的な議論に基づく「提言書」が3月26日知事に提出され、これに基づく県の「県立都市公園の整備・管理運営方針」(案)が同27日に発表されました。

 私たちの運動の経過と評価は3月初めに発表した「総括書」に記載の通りですが、2年間の明石公園部会の議論と、そこから導き出された「提言書」および県の「県立都市公園の整備・管理方針」は、画期的な内容を含んだものとして高く評価します。こうした提言と県の方針の具体的な展開の中で、明石公園をはじめすべての公園が都市の公共空間として、市民の参画と協働のもとに地球環境時代にふさわしい、自然豊かな「みんなの公園」に育てていけるように期待します。

 以下、私たちがとりわけ高く評価する県の方針のポイントを抽出しておきます。

「提言書」の論点 自然環境保全と管理運営の新しい視点

 検討会の議論は、明石公園はじめ播磨中央公園、赤穂海浜公園の3つの県立公園をケーススタディとしてそれぞれ部会を設けて、地元の市民や過剰伐採の中止を求めた市民団体の代表も含めて「県立都市公園における自然環境保全のあり方」と「県立都市公園の活性化のあり方」の2つのテーマについて、検討が行われました。提言書の中で検討会は、都市公園における「市民参画」と「合意形成」の再構築が2つのテーマに通底していたと明記しています。

 また、協議会の仕組みがなかった明石公園では、丁寧な合意形成プロセスを経て、新たな協働の仕組みや取り組みに至ったことで、協働による公園づくりの重要性を改めて認識することになった――と提言書でも高く評価しています。

樹木伐採は、一本一本の対応と合意形成のプロセスを明記

 「自然環境保全のあり方」については、2つの「ゾーニング図」が作成され、とりわけ「ゾーニング図B」では、個別に配慮・留意すべき魅力や資源をスポット的に図に表示し、公園利用者から掲載すべき情報を募集し、随時更新して公表していくことを定めています。掲載する情報は、集まったものをそのまま載せるのではなく、管理運営協議会等で検討した結果、合意を得られたものについて掲載していくことが望ましいとされています。削除する場合も同様な手順を経ることにしています。

 また、樹木管理には①剪定 ②伐採 ③植樹 ④治療・保存の4つの手法があることを確認し、ケースによって適切な手法を選択していくことを確認しています。その上で、明石城跡の石垣周辺では、石垣への影響がある等の樹木は伐採し、それ以外の樹木は剪定や接ぎ木等による保存を含む経過観察を行うこととする対応基準を定め、樹木1本1本の対応を検討することが明記されました。

 樹木管理を実施する際には、とくに伐採計画を策定する前の段階において、伐採に関する合意形成をどう図るのか、ルールが決まっていないことも課題であったことから、管理運営協議会等の協議の場を設けたうえで、樹木管理に係る合意形成を進めていくためのルールを作成し、公園利用者等への説明の周知と意見聴取の実施についてもルール化されました。

 また、石垣周辺に残っている樹木と石垣の関係については注意深く観察する方針が掲げられていますが、石垣上部の樹木を伐採した後の石垣の安全性については言及されていません。つなぐ会は、石垣上の樹木を伐採すると、石垣内に張り巡らされた樹の根が枯死して、そこにできた空洞に水が流れ込むことで石垣の脆弱化を招くと警鐘を鳴らしてきました。これについては、検討委員会で専門家からも同趣旨の懸念が表明されています。将来に向けて監視と議論を続ける必要があります。

2つの協議の場の設定とコーディネーターの配置

 管理運営協議会はこれまでにも多くの県立公園でつくられていますが、市民や利用者が参加するという実効性を担保するために、提言書では「管理運営協議会(等)」と付記されました。従来の管理運営協議会のように固定されたメンバーで公園の管理運営等について継続的に協議を行う場のほか、定常的に活動するサークルや団体、実験的なプロジェクトなど公園の利活用について議論する場もありうることを想定し、「等」を付けたものです。

 さらに、管理運営協議会等が目指すべき姿として、以下のような目標も挙げました。

◆「要望の場」ではなく「連携のアイデアを提案し、活動につなげる場」として、市民自らの発意と行動により行政と市民や市民同士の連携、活動を促す場をめざす。

◆既存の活動のアウトプットだけでなく、新しい視点を取り入れるインプットの場としてさまざまな個人や団体が他の取り組みや関心事項についてもお互いにインプットし、理解を深める。

◆それぞれの公園の価値(固有の価値だけでなく、新しい価値、失われていく価値)を認識し、共有したうえで、公園の管理運営を考える。自然、歴史、スポーツなど各人が持つ公園のさまざまな価値を主張するだけではなく、認め合う場とする。これから生じるかもしれない新しい価値や、従来価値があるとされていたが失われていく価値もあることを認識する。

 明石公園の管理運営について協議する場としては、管理運営協議会の設置とともに「明石公園みんなのみらいミーティング」を設置して、メンバーを固定せず誰でも自由に参加可能な場で、だれもが自由に「談義」(重要なことを話し合う)する、いろいろな情報や人を「マッチング」する、明石公園のために取り組まなければならないことを「企画」する―という役割を担うことも決めています。ミーティングの運営と、話し合われた内容を管理運営協議会に報告するコーディネーターを配置することとし、当面は明石公園部会の部会長を務めた高田知紀県立大准教授が当たることも明記されています。

新しい仕組み定着へ予算の確保や制度整備への注文も

 以上のような新しい「しくみ」がうまく機能するかどうかは、市民と公園の管理運営に当たる関係者の取り組みにかかっています。また、提言書では最後に重要な指摘と改善も付記されています。

 「兵庫県の県立都市公園の指定管理料の水準は全国的に見ても低く、指定管理者が収入を得る環境も乏しいため、共創の促進に必要な対応が十分実施できないことが懸念される。県は共創の促進を図ることができるよう、管理水準で求める支援体制の構築、そのために必要な予算の確保、それを担保する都市公園条例の改正や柔軟な運用に資するガイドラインの策定等の制度整備について、前向きに検討されることを要望する。」

 ここでいう「共創」とは、都市公園全体で公園利用者等の「参画と協働」を促進し、新たな価値を生み出す仕組みづくりと運用を指しています。兵庫県の都市公園予算は指定管理制度に移行した約20年前に比べて半減していると言われます。市民の参画とともにこうした構造的な仕組みにもメスを入れることも含めた議論が必要です。

市民・県民本位の柔軟で丁寧な対応、参画と協働を発展させる強い決意表明

 提言を受けた県は「県立都市公園の整備・管理運営方針」(案)の中で「公園ごとの差異を積極的に許容します」と、次のように明言しています。

 「検討会の検討結果を各公園に導入する際には、全公園で画一的な仕組みやルールを設定しようとするのではなく、各公園の議論の結果を尊重し、公園ごとの特性に応じた差異が生じることを積極的に許容します。また、一度決めた仕組みやルールに固執することなく、自然環境や社会情勢、現場の状況等に応じて、柔軟に更新していきます。公園に寄せられる多様な意見や要望に対しては、その実現に向けて一緒に考える伴走型の対応ができるような体制の整備を検討します」

 これは、過剰伐採を巡る混乱をもたらした県の当時の姿勢を真摯に反省し、今後は市民・県民本位で柔軟で丁寧な対応をする強い決意を表明したものと受け止め、高く評価します。「参画と協働」さらに新たな価値を生み出す「共創」の公園づくりを進める上で、県がその決意を貫くことが強く求められます。

つなぐ会は4月末で解散し、一人ひとりが新たに向き合います

 「明石公園の自然を次世代につなぐ会」は、当初めざした目的が達成されたと判断し、3月初めに「2年半の活動総括文書」を発表し、続けて会のメンバーがそれぞれ活動をふりかえった感想等をまとめた「振り返り集」を公表しました。当会は本日の声明の公表をもって、4月30日で解散します。この2年半、ご尽力いただいた県立公園のあり方検討会、とりわけ明石公園部会の皆様や県公園緑地課および明石市の関係者、県園芸・公園協会の皆様、何よりもこの活動に参加し、協力とご支援をいただいた多くの市民の皆様に感謝します。

 今後は、会の活動に参加したメンバーがそれぞれの立場から、市民参加の新しい明石公園づくりに参加していきます。私たちの活動へのご理解と応援に対して、感謝申し上げます。ありがとうございました。

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