県立都市公園のあり方検討会 第 12 回明石公園部会への意見書

2023 年 9 月 25 日

明石公園部会部会長 高田知紀様 

 明石公園の自然を次世代につなぐ会 

8 月 30 日に開催された第 11 回明石公園部会に県から提示された「今後の方針」に関わる資料に ついて、幾つかの危惧を感じる点がありますので、以下の通り意見書を提出し、慎重な審議をいた だきますよう要請します。 

1.樹木管理の前提である「合意形成のプロセス」の合意ができていない段階で、新たな樹木管理 の方針をだすのは、順序がちがうのではないか。樹木管理のあり方を含めて、談義所や管理運 営協議会などの合意づくりの仕組みを最優先に議論を進めることが先決ではないか。樹木管理 の方針は、緊急性の高いものに限定すべきです。  

過剰伐採の問題は、合意形成の仕組みがないことに原因があると考え、明石公園のあり方や実 際の管理について、市民の意見に基づいて進める公園づくりを議論してきたのが明石公園部会だ ったのではないでしょうか。その考えに基づいて、合意形成の仕組みづくりに関する3回のワーク ショップを行い、検討委員会でも、談義所や管理運営委員会などの仕組みづくりの検討を行って きたものと理解しています。 

樹木管理についても「実際に樹木管理を行う際の合意形成」「日常の維持管理や特別な維持管 理も協議の場において計画を説明、相談」することなど、「合意形成へ向けた協議」を行うこと を明石公園部会の方針としても明記されてきました。 

すなわち、適切な樹木管理を行うためには合意形成の場が必要で、そのために談義所や管理運 営協議会などの仕組みづくりに取り組んできたのが明石公園部会の流れだと思います。 実際、第4回部会では「部会での議論を経て決定した合意形成プロセスに基づき、樹木管理を行 う」ことが確認されています。 

その矢先に、樹木管理や伐採基準に関わる方針案が出てきたことに対して、大きな疑念を感じざ るを得ません。まず、合意形成の場づくりに関する議論を進め、新しく生まれる合意形成の場で樹木伐採の基準等の方針を決めるべきではないですか。それには時間がかかりすぎるということであ れば、当面の樹木管理は極めて緊急性の高いものに限定すべきです。 

2.明石公園は単なる「史跡公園」ではなく、「歴史的資産」と「豊かな自然環境」「運動公園」とい   う 3 つの特質を持った公園であるというこれまでの“合意”を尊重するべきです。  

資料 2「眺望ゾーンの設定」や資料 3「石垣周辺における樹木管理の方針」を見ていると、これ らの方針設定には 2017 年策定の「明石公園 城と緑の景観計画」をベースにして設定したと記 されています。同計画はこれまでの部会審議の経過の中で「史跡保全を最優先し、明石公園の持 つ自然環境を軽視している」ことが指摘されてきたことが記載されていません。樹木の過剰伐採 の根拠とされたこの計画が、過剰伐採への反省を経て新たな明石公園の管理運営をめざしている 中で“不死鳥”のごとく蘇っている違和感を感じます。 

嶽山副部会長が昨年実施した市民に対するアンケート調査(第 7 回明石公園部会資料)では、「樹木 などの自然環境と石垣などの歴史資産の両方を大切にした管理が重要」「巨樹はとくに大切にしたい」 とまとめられています。市民の意識としても、樹木などの自然環境と石垣などの歴史資産の両方が大

切としていることが部会に報告されているわけですから、歴史的資産を主役としている県の方針は市 民の意識からもずれています。 

すでに何回も確認されてきたように、明石公園は「歴史的資産であるお城」とともに、「豊かな 緑に包まれた自然環境」と「広く市民に親しまれている運動公園」という 3 つの特質を基にした 管理運営方針をつくるべきです。 

3.景観形成と眺望については「お城」と「石垣」の眺望だけを言及していますが、自然豊かな「緑  の景観」や眺望について触れていないのは、上記 1 と関連して明石公園の景観保全への視点が一 面的です。  

城と石垣の眺望確保の方策として、樹木の「伐採」ではなく「剪定」を基本としていることは首 肯できますが、明石公園は江戸時代の「明石城」から明治以降は「明石公園」として城跡に緑豊か な自然環境を育んできたところに、今日的価値があります。したがってお城や石垣を包み込む樹木 とのバランスが明石公園の特徴であることも、すでに確認されている通りです。 

だとすれば、お城や石垣とバランスの取れた緑の景観をどう保全していくかの視点も大事にする べきかと思います。方針には、そうした視点からの記述がないことに、危うさを感じます。景観形 成の方針で「石垣・櫓を主景とし、適切に整備された公園の緑や花が主景を引き立てる添景となった景 観を目指す」としていることは、改善の必要を感じます。「歴史的資産と自然のバランスの取れた景観」 という表現に改めていただきたいです。緑をお城と石垣の景観の“邪魔者”扱いするような記述と方 針は避けたいものです。 

前項で紹介した嶽山副部会長のアンケート調査では、「石垣景観だけでなく、屋上ガーデンから の風景や、剛の池周辺の景観も魅力として捉えられている」と報告されています。この点でも、 石垣を景観の主役とする県の捉え方は市民の意識からずれています。 

また、樹木管理の方針については「石垣周辺の樹木管理」しか記載がありません。石垣と関係の ないエリアの樹木管理や緑の景観形成についても、しっかりとした方針を明記するべきではありま せんか。これまで欠落していた「明石公園の自然環境」をさらに豊かにしていくための方針を明確 にすることによって、新たな明石公園づくりへの方針になるのではないでしょうか。 

4.剪定によって対応することが不可能な場合について「早期伐採」と「経過観察」の2つの選択  肢しか用意していませんが、「残すべき樹木」等の保全指定も検討するべきではないか。  

石垣周辺の樹木についても、一律に伐採するのではなく「一本一本、専門家の意見も入れて確認 する」という原則が合意されています。石垣周辺の樹木については、当該の樹木が石垣にどのよう な影響をもたらしているのか、あるいは今後もたらすのかという専門家の評価を得て、対応を決め ることを原則とするべきです。石垣周辺の樹木を一律に伐採したのが“過剰伐採”の反省であった ことを直視し、合意形成の仕組みを踏まえた中で、慎重な対応を行う原則を確立したい。 

そのためにも、もし今後県が日常管理を超える伐採が必要と判断することがあれば、それらの樹 木の本数と位置を公表し、一定の期間専門的な見地からの意見を求めた上で、今後策定される合意 形成のプロセスにかけるべきです。併せて「残すべき樹木」については保全指定をする選択肢を検 討することが肝要です 

5.樹木の生態的価値、文化的価値、学習的価値、景観的価値を重視するためには、管理的側面だ  けではなく、樹木や緑の持つ多様な価値を尊重し、育てる視点が欲しい。  

資料 3 の「今後の方針」では、樹木管理の基本的スタンスとして「大きくなり過ぎたことで景観

を阻害する樹木、あるいは鬱蒼とすることで防犯上の問題が生じうる環境については、基本的に剪 定を行う」としている。また、「重要な価値を有する樹木を伐採しなければならない場合は、その価 値を引き継ぐ方法を検討する」としています。 

この方針からすると、大きな樹木は管理上の“厄介者”とされ、巨木は育てないということにな りかねません。また、全国には枯れかけたり、朽ちかけたりしている樹木も「重要な文化的価値」 「自然生態的価値」「歴史的価値」を認めて、特別に保全措置を取っているケースはたくさんありま す。資料 3 の方針に基づき機械的に管理運営されると、明石公園が有する自然環境を次世代に引き 継ぐことができなくなる恐れも生じます。 

「重要な価値を有する」樹木や緑の生態をまるごと保全することも含めて、今後何世紀にもわた って次世代に引き継げるような明石公園に育てていきたいものです。そうした方針を明確に謳うこ とも重要かと思います。 

また「剪定のあり方」についても、樹木を景観を構成する主人公の一つと位置付けるなら、樹形 を崩し景観を破壊する「強剪定」ではなく、「杜の都・仙台市」の街路樹で行われているように「樹 形に配慮した剪定」を行うべきです。仙台市の「街路樹管理マニュアル」を入手して、剪定のあり方 をぜひ検討していただきたい。 

6.「石垣から 5m以内の樹木は原則伐採」の考え方は、これまでの部会議論の中で事実上白紙  になったはずですが、資料 3 の方針案では亡霊が復活したように延々とその正当性が説明され ています。  

昨年 9 月 13 日の第 4 回部会の資料 6-1「史跡明石城跡の石垣管理」の最後には、「今後の樹木管理」 について次の 2 点が明記されています。 

①石垣より5m以内を伐採範囲とした樹木伐採の基準については、部会での議論を踏まえ、 見直し を行う。② 部会での議論を経て決定した合意形成プロセスに基づき、樹木管理を行う。 ところが第 11 回の部会では、その「合意形成プロセス」が未だ合意できていないのに、いち早く樹木 管理の方針を打ち出しています。これでは、今回の公園緑地課の提起した方針案が、部会の議論の流れ に反していると言わざるを得ません。 

第 4 回部会で「石垣より 5m 以内を伐採範囲とした樹木伐採の基準」については、委員からさま ざまな疑義が出されていました。資料「史跡明石城跡の石垣管理」では、根拠の 1 つとして「丸亀 城の事例では、苅住曻著『最新樹木根系図説総論』における樹木の根の広がりを根拠に石垣より 5 m以内の樹木を除伐としている」と書かれていますが、同じ資料で一覧表に整理された丸亀城の事 例では「石垣上部 石垣から 5m以内の樹木は撤去を検討する」と書かれています。「撤去を検討す る」と「除伐」は、全く異なります。 

今回の資料でもう 1 つの根拠とされている伊予松山城の事例は第 4 回資料の「各地の城跡での 樹木管理に関する方針等について」には言及がありません。逆に同じ資料で、和歌山城は「石垣 から 3m以内の樹木は伐採、剪定」とか、特別史跡の姫路城跡は「石垣から 2m」などと紹介され ており、「石垣より 5m 以内は原則伐採」という方針の正当性を説明しようとした資料は、逆に兵 庫県の過剰伐採の方針が、他に例を見ない特異な方針であった可能性を示唆しています。 

このように「石垣より 5m 以内を伐採範囲とした樹木伐採の基準」は破綻して撤回されたものと 理解していましたが、今回の部会では「石垣より 5m 以内」の正当性を論証しようとする議論が再 び亡霊のように復活しています。議論をいたずらに長引かせる「石垣より 5m 以内」という線引き は、きっぱりと破棄するべきではないですか。

7.自然環境は、過剰伐採のように急激な変化を与えると生態系を狂わせてしまいます。現状変  更は一気に行わず、段階的に、緩やかに行うことが肝要です。  

大規模に急激に過剰伐採した明石公園は、雑草がわがもの顔で繁茂し、下草の環境も激変して昆 虫や野鳥の生息にも大きな変化が生じています。まるで、大きな災害に見舞われたかのような生態 系の変化をもたらしています。石垣周辺でも過剰伐採の前には見られなかった雑草の繁茂や、緑陰 になっていた石垣がむき出しになったことから雑草や樹木の繁殖もこれまでにない成長ぶりです。 

自然界は急激な環境変化を与えることによって、長い間安定的に経過してきた生態系を狂わせて しまいます。今後とも、自然環境の現状変更は一気に行わず、段階的に緩やかに行うことが肝要で す。樹木管理の方針では、自然界は生態系の連鎖が一つでも切れたら、多くの生物に大きな影響が 及びます。そうした生物多様性への配慮を、樹木管理の方針にもぜひ盛り込みたいところです。 

8.第 10 回部会で行われた公開ヒアリングの結果について  

上記の市民の発言や部会委員との意見交換結果について、未だ部会審議の俎上に上がっていませ ん。本来は、今後の方針を審議の載せる前に市民からの問題提起をどう受け止めて反映させるのか が議論されなければ、公開ヒアリングは単なる「言いっ放し」「聴きっ放し」になりかねません。長 時間をかけたせっかくの公開ヒアリングを、単なる“ガス抜き”とすることのないように、部会と して今後の方針にどう反映させるかについて審議していただくよう、お願いします。 

以上、取り急ぎ当会のメンバーで議論した要点を、意見書として提出します。 今後の方針の審議と取りまとめに反映していただくことを、期待しています。 以上

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