いわゆる「5m問題」と、つなぐ会の「樹と石垣は実は仲良し」の主張

過剰伐採の根拠となったのは、県の「石垣から5m以内の樹木は原則伐採」という方針でした。これは「城と緑の基本計画」で明記されたものですが、当初は答申文が公開されていなかったため、なぜ5mと決めたのかが分かりませんでした。つなぐ会が全国の事例を調べたところ、姫路城が「2m以内」であるなど「5m以内の原則伐採」という方針を採用している例は皆無に等しいことが分かりました。つなぐ会は繰り返し5mの根拠を県にただしたが、県は「樹木の根は石垣に悪影響を与える」という説明を繰り返しました。

これに対して、会は「樹と石垣は実は仲よし」という主張をホームページに掲載して反論しました。岩山における樹の根と岩の親和性や、実際に明石公園の石垣を虚心坦懐に観察すれば、樹の根が石垣を守っているように見える事例が圧倒的に多いことなどから、次第に理解されるようになりました。今では、従来は「樹の根は石垣に悪影響を与える」と主張していた審議会の委員ですら、「石垣に生えている木が石を守るということも一時期はあると思う」と述べるに至っています。

ただ、つなぐ会が当初ホームページに掲載した説明には、不正確な記述も含まれています。実際のところ、土中において樹の根と石垣がどんな関係性を築いているのかは、まだまだ科学の目が届いているとは言えません。私たちは、分からないことについては断定的な態度をとらず、謙虚さを貫くことが必要だと考えます。

「5m問題」と「樹の根は石垣の敵対者か友だちか」という議論は、絡み合いながら全体を貫く一つのテーマになりました。最終的には双方が歩み寄り、「5m以内の原則伐採」の方針は後退し、樹木と石垣の関係については、「ケースバイケースで、現場確認の上で判断する」という結論に着地しました。これは、まだまだ未解明の問題には謙虚な態度で対応する合理的な結論だと考えられます。樹の根が石垣を動かしているように見える事例については、石の動きを測定する装置を設置し、経過観察を行うなど、県は丁寧に対応することになっています。

なお、「5m」の基準については、阪神・淡路大震災で被災した明石城の石垣修復作業の教訓から、「次回の修復作業の際には5m以内の樹木は工事の妨げにもなる」ということから、提唱されたことも明らかにされています。

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