明石公園の石垣を守るためとして、多くの樹木が伐採されました。それに対して、「明石公園の自然を次世代につなぐ会」は、「樹と石垣は、じつは仲良し 樹が石垣を守っている!」という記事で、石垣の内部に張り巡らされた木の根が、石垣と一体化して、石垣を守っているという視点を提供しました。
樹木の根は、史跡の破壊しているのか、守っているのか?という議論が、大きなスケールで展開されている所があります。
カンボジアのタプローム遺跡です。
ぜひ、googleで「タプローム遺跡」を画像検索してみてください。大量の驚くべき写真が表示されるはずです。
アンコール遺跡群の中のひとつ「タ・プローム」は、12世紀末(1186年頃)に当時のアンコール王朝ジャヤヴァルマン7世の命により仏教寺院として建てられ、のちにヒンドゥー教寺院に改宗されたと伝えられている遺跡です。ラテライトという赤色の風化土で作られた壁で東西に約1000m、南北に約700mが囲われています。
世界遺産に指定されていますが、この遺跡の保全をめぐって、ユネスコを中心に議論が行われているそうです。
はたして、この木の根は、遺跡を破壊しているのか守っているのか?
もし、木の根が遺跡を破壊しているのなら、1000年近くもこの遺跡が残されているでしょうか?
建造されて1000年近く経っていますから、遺跡の損傷が酷く、倒壊の危険もあることから、インド政府が修復保全を担当しています。人工的にメンテナンスを施し遺跡を維持していますが、遺跡を覆っている樹木に関しては、樹木が遺跡を支えているから伐採すべきではないという意見も上がっているようです。実際、木の根の様子をよく観察すると、遺跡を押しつぶすどころか、遺跡の壁に沿って成長し、一体化して守っているように見えます。
現時点では、この木の根を取り除く工事は行われていないようです。
明石公園の樹木が石垣を破壊しているとして、大量に伐採されたことは、拙速だったのではないかと思わざるを得ません。